am5:30。
大江戸線の車内は青白い顔をした人々が、椅子に座りうなだれている。
赤羽橋から乗ってきた秋葉系の若者は僕の後ろ姿を下から上までなめる様に見ている。僕はその様子を黒い窓に越しに見ている。
4年間勤めたデザイン事務所を1週間前に辞めた。
四国に歩きにいくという理由で辞める社員を社長は怪しんでいる様子だったがすんなり送り出してくれた。
人の目を気にしたり、いらついたり、不安になったり。そんな事は、普通だと思っていたことが、普通でなくなった時、常に移ろう心とはなんだろうという疑問と、もっと世界を見てみたいという冒険心の高ぶりが押さえられなくなった。
それが僕にとっては仕事を辞めて四国に歩きにいくという事の十分な理由だったし、辞めると決まる前から準備を整えだしていた。
詰め過ぎの荷物 |
足の先から頭の先まで装備を整えた僕は都会ではかなり浮いた存在となったが、そんな事は全く気にはならないほど、気分は晴れやかだった。誰かが作ったルールに従わなくていいという自由があった。
大門でモノレールに乗り換えた。
月曜日の朝のモノレールはスーツ姿のサラリーマン達が日本全国津々浦々へ向かう為に乗車していて、ほとんどの人が旅を楽しもうという気はないように感じられた。
背負っていた55Lのバックパックを預けると、徳島行き飛行機のクラスJに乗り込んだ。
他に乗っている人々の1/3くらいは顔見知りの様でそれぞれしきりに朝の挨拶を交わしていた。一番前の真ん中の2席を一人で確保していた30代後半~40代の男性エグゼクティブはキャビンアテンダントに「◯○様いつもご搭乗ありがとうございます。」と挨拶されていた。そのキャビンアテンダントの手にはわかりやすくメモ紙が握られていたけど。
出発ギリギリのタイミングでタレントのDとHが乗ってきた。眠たそうな、気の入ってない顔で座った瞬間、それぞれのマネージャーから手渡された弁当を食っていた。
エグゼクティブはスケジュールでもチェックするのか手帳を取り出し脇に置いた。
その様子を見ながら、前日高ぶって寝れなかったのもあり、すぐに眠りについた。